Satoru Hiura はてな

漫画家ひうらさとるの主に映画や本、漫画の感想ブログです

未来は彼らの手の中に

才能のある、まだまだ若い作家さんが先日亡くなられました。


彼は余命を宣告された癌という病に冒されていることを公表
していて、ネットで日記を描いていました。


彼の最後を知らせる担当編集さんが書いたメッセージに多数
のコメントが寄せられていて「会ったこともない人が亡くな
って、こんなに哀しいのは始めてです。」
というものもありました。
私も本当に同じ気持ち。
ただたまたま見たテレビに彼が出ていて、なにかすごく
印象的で(もちろん彼の発言がとても心に残ったんだけど、
私の好きなインパルスの板倉にちょっと似ていたのも大きい…。)
日記を読むようになって本はネットで取り寄せて。
と本当にまさに通りすがりの訪問者だったのだけれど。
日記といっても闘病記的なものはわざとあまり表に出さず、
ドライでどこか音楽を感じさせる彼の文章が好きでした。
でも本も買ったものの今の仕事が終わったらと、ベットの横に
置いたままだった。
もっと早く読んでおけばよかった、感想を送っておけばよかった。
それでなにになるわけでもないけれど。


”ネットに載せる日記なんて本当の日記じゃない、そんなもの
さらしてなんの意味があるのか”という考え方があります。
そろそろ10年近くネットになんかしら載せている私は内心少し
傷つきながら、「でもそれも一理あるかもな」と思います。


だけど少なくとも彼の日記に関してはネットに載せることに
ものすごく大きな意味があったのです。
彼は以前テレビのインタビューで「俺が生きていた証しを残したい」
と言ってました。
本のような手元に残るようなものも、もちろんその一つだけれど。
もう決して彼の手では更新されないサイトが、彼が本当にいなく
なってしまったことをなによりもリアルに感じさせます。
そしてそれをリアルに感じる会ったこともないけれど見守っていた
人たちの手で、彼がいなくなった後もずっとずっと更新される
コメントこそが彼が最後までこの世界で精一杯生きていた証し。


「今はまだ東京の空の下かな。書店でお会いしましょう。」という
コメントもありました。
私も最新刊はネットではなく書店に買いに行こうと思います。
最後の本に託された彼の未来を、この手にとって感じたい。