前作の「メタボラ」はリアルで鬱屈した
下流社会を描いたものでしたが(いやこれもおもしろかったのですが、インフルエンザで寝込んでいるときに読んだからかものすごく重かったイメージが…)これは一転、ありえない設定にぐいぐい引き込まれる
無人島サバイバル物語です。わたしはこういうバトルロワイヤルものを読むと「いやぁ〜〜わたしなら始めにあっさり死ぬ役がいい〜」と腰がひけてしまうのですが、これは行け行け清子〜と楽しんでしまいました。とにかく桐生さん独特の女の強欲さと開き直りが痛快です。簡単に恋愛感情や母性に逃げないのがこの作者の好きなところ(清子のふらふらするいい加減な母性の描写には笑ってしまった)。太平洋戦争中、実際に起こった
アナタハン島事件がモデルみたいですね。
反対に生命力のなさすぎる主人公にいらいらしながら読み進めてしまったこの作品(笑)。途中から「ん?これは作者の手中か?」と気づいたところからおもしろくなってきました。ラストの主人公のセリフで納得。うーむ、さすがに上手い作家さんです。
正直全く共感できない女主人公のお話2本でしたが、非常におもしろかったです。ベテランの技に心地よく酔えるって読書の醍醐味ですよね。