Satoru Hiura はてな

漫画家ひうらさとるの主に映画や本、漫画の感想ブログです

Baby,逃げるんだ

ワタシの高校生時代はRCサクセションの何度か目の大ブレイク時期で「BLUE」というアルバムが発売されたころでした。
当時レコードだったのでそれこそ比喩ではなく擦り切れるほど聞き込んだ。生まれて初めて行ったライブもRC。夏の大阪の住之江ボード競技場。ボートに乗った清志郎が水上ステージにひらりと表れたときのことを今でも思い出す。人間じゃないみたいだった。かっこいいとかカリスマとかそういう感じもあったけど、それ以上になんだか小さい妖精みたいでした。
タイマーズのころ友達がレコード会社で清志郎さんの宣伝スタッフをやっていて、なぜか楽屋でご挨拶させていただいたことがあります。
すごく腰が低くて丁寧な方だったんだけど、なんだかそのときも生身じゃなくて発光している…なんていうかやっぱりカリスマというより地方で昔から田んぼを守っているような、お守りの中に入っているような小さい神様みたいだった。

思春期に一番聞いた音楽なのでそれはもう数限りなく影響を受けていて、マンガにもよく歌詞など使わせていただいたなあ…。(もちろん許可を取って)
「Baby,逃げるんだ」というタイトルは「なかよし」専属をやめてフリー作家になったとき初めて描いたマンガのタイトルに使わせていただきました。お話を考えているときずっと頭の中に鳴っている音楽だったのとこれからの生き方?マンガと仕事の仕方?のビジョンみたいなものの歌みたいに思えて。

さいころからぼんやりした子だったくせに現実から逃げるという考え方が好きじゃなかった。
でも現実の今すでにある正攻法ではこのまま望むように自分が楽なように生きていける気もしなくて、それが魅力的にも思えなくて。
どこかに抜け道はないか、この世界でなるべく楽しく生きていけないものかとずっと考えていたような気がします。

それを教えてくれたのが私にはたぶんマンガを描くことで、その逃げない逃げ方を指してくれたのがきっと清志郎の歌。



内ポケットにいつも

いまも 


トランジスタラジオ。


この歌の”いまも”のときの清志郎の子供のような澄んだ声がものすごく好きだ。

BLUE
PLEASE