Satoru Hiura はてな

漫画家ひうらさとるの主に映画や本、漫画の感想ブログです

干物女キーワード化ちょっと裏話

わあ!びっくりしたkowagariさん(id:kowagari)じゃあないですか!模倣犯のころから楽しく読んでいます。トラバありがとうございます。コミックスも買っていただいたそうで、すすみません…。ありがとう。

ところでkowagariさんの日記にあった“で、そのとき「自分のための宣伝キーワードって登録していいの?」とかいう議論がダイアラー間でもちょっとあったわけなんですけども”についてちょっと書いてみたいと思います。(すんごい長くなっちゃいました。すみません…)

確かに干物女キーワード化することに全く商売気がなかったと言えばそれはうそ。商業誌で長年描いてて「一冊も買ってほしくない!」と思っている人はあんまりいないように、わたしもまんがの話も考えますが売れも考える(すっぱりと)。でも今回はそういう意味とは別にどうしても自分の言葉で伝えたいことがあったのです。しかし全国区の商業誌で描いているからこそ、あまりのスタンドプレーは今まで普通に読んでくれていた読者に誤解される危険性もあります。
そこで“はてな”でした。はてなダイアラーさんたちなら「なにこのシト、キーワード化するためにプロなのに30日も日記て!ばかじゃね?ウケる」て笑ってくれるかもしれないと思いました。シャレにしてくれるかなと?(実際そういう反応をして下さる人も多かったのですが、議論もあったのですね。不快に思われた方々には謝ります。ごめんなさい。)もちろんそれでも「…必死だな」「イタた〜」と言われる(書かれる?)方もいるでしょう。まあそれは私が一人でビール一缶分くらいクサればいいだけのこと。

で、「なんでそこまでしてキーワード化?」って話なのですけど。
最初の頃“干物女”で取材受けたときに扱いがわりと“干物女VS負け犬!”とか“恐怖!干物女はこうだ!”みたいな感じだったんですよ。番組や記事としてすごくおもしろかったし、まだたいして売れてない頃から(大体コミックスもまだ1巻しか出ていなかった。)取り上げてもらえるだけでありがたいねと担当さんたちと言っておりました。まあ多少の誤解はまんがの方を読んでもらえば解消するしとも思っていました。

で、ふと「そういえば干物女って話の流れで思いついただけだけど、もしかしてもう誰かが提唱している言葉だとヤバイな」と思って“干物女”でググってみたわけです。(連載始める前に調べろよってハナシですがほんとに始めはこの言葉だけこんなにピックアップされると思わなかったので)まあ大体“名産干物通販”のページしか出てこなかったのですけど、ちらほら日記などに書いている方々もいてらして。
…そ、それが半分くらいが不快反応だったのですよ…。(1/4ぐらいが「こんな言葉があるってテレビやってたよ〜」というぼんやり系1/4ぐらいが「干物だっておもろいね」というおもろがり系)いや、半分は大げさかな?でも一番心に残ってるのがこういう感じの日記。

「あ〜あまたこんな嫌な言葉が表れたよ。毎日仕事してがんばってるのになんで女だけこう蔑まれなきゃいけないわけ?恋愛してなきゃ結婚してなきゃ人じゃないの?」

すごいショックでした。まさにこういう女の子に元気になって欲しくて描いてた漫画なのに、全く反対の作用をしている。なんちゅうこったと。申し訳なくてしょうがありませんでした。言葉の一人歩きとはこういうことかと初めてわかりました。
そのときいくつか取材の予定も入っていて、この流れを自分で変えなきゃと思ったわけです。「もうそんな広がらないよ大げさだよ、むしろ漫画の方を広めて誤解を解けばいいじゃない、あんた漫画家なんだから」とも思いました。でもわたしは漫画家でありながらネットでテキストなどを発信して彼是10年の人。アホな日記ばかり書き散らすのがネットの利用法じゃない、こういうときこそ自分の言葉で発信するべきだと。(で、結局そのためにまたアホな日記を書くハメになるのですが…)

はてなでやってみてよかった!と思ったのがキーワードのページを作って、そのあと日記を書いたのですが(これです)、どなたかがその日記を“作者ひうらさとるの言葉”とリンク編集してくださっていたのです。「自作キーワードだからって自分語りしすぎるのはなにかな」とキーワードのページには3行くらいにまとめたのですが、この日記をリンクして下さったことにより、意図が更に伝わる形になりました。この方には私の伝えたいことが伝わっていたのです。素晴らしい!これははてなならではなのではと感動しました。

まあ長くなりすぎましたが、こういういきさつだったのです。伝えても伝えても誤解されることはあるけど、なにもしないより全然良かったと今は思っています。はてなのことはまだまだわからないことがいっぱいなのですが、長く続けられればいいなと思っています。